1998年10月3日 山梨大学・坂本康

◆背景

 現在の土壌・地下水環境問題では外因性内分泌撹乱物質などの測定の難しい超微量物質の移動経路・循環経路の推定表層汚染物質の地下水への移動速度の推定廃棄物処分場の廃棄物層・周辺地下水での物質移動の評価などが重要になっています.これらの研究では「水の循環ばかりでなくそれが物質の循環・変化に与える影響をも検討する水文学−環境水文学」の役割が大きいと考えられます.そこで「環境問題解決に役立つ水文学という視点で地下水理・水文学の現状を整理し今後の研究に対する戦略をたて土壌・地下水汚染の改善を目指した研究を推進すること」を目的とした研究グループを水文部会の中に設立する方向で検討を始めました.

・水の移動に関する研究が地下水汚染などの環境問題に実際に応用できるまでになっていないのではないか.

・「人という種の保存のための水文学」として環境水文学水の循環ばかりでなくそれが物質の循環・変化に与える影響をも検討する水文学が必要ではないか.

◆目的

1.環境問題解決に役立つ水文学という視点で地下水理・水文学の現状を整理し各研究者の現状認識・問題意識の相対化ある程度の共通化を図り今後の研究に対する戦略をたてる.

 (注)戦略(ストラテジー):リソースの配分ユニットの連携デヴェロップメントのプラン

2.知識の社会還元

・土壌・地下水汚染浄化技術とその評価などの実用的指針

・地域の環境問題への対応−廃棄物処分場など

・途上国の淡水資源問題への貢献

・リスクアセスへの対応

・日本の研究のリヴュー

3.研究者発掘・育成

環境問題をやってみたい浸透の物理学をやってみたいというようなことを漠然と考えている人にもある程度の研究指針を示す.

◆研究グループ化のメリット

1.自由な討論が研究活動の刺激になる.

2.水文部会による権威付けで対外的交渉が容易になる

  外部講師の招請国際共同研究への参加など

3.情報収集・流通の円滑化

  他分野・他学会などへの目配り情報交換

4.共同研究論文査読

◆土木系水文学の特徴

1.技術的対応が視野にある.

2.物理学的視点がある.

3.室内実験・現場観測・モデルシミュレーションなど手法が広い.

4.地質・化学に関する事項は取捨選択して取り入れる.

◆活動形態

1.助手・大学院等クラスの研究者が活躍できるような形態とする.

2.適当なテーマである程度の人員が集まれば共同で科研等に申請する.

3.水文学外土木学会外の講師による講演と交流

4.テーマを設定しての研究発表と討論

5.既往の研究の評価(水・水ハンドブックなど)・勉強会

6.当面は土木学会年次講演会水理講演会前後を定例会とする.

7.ネットを利用した活動(ネット上の仮想リサーチセンター−研究者ネットワークメイリンググループリレイメイルなど)

8.その他

 ・試験地などでの共同観測

 ・浸透モデル有効性のコンペ

 ・浸透速度の実測例の整理と評価

 ・重要論文の選出と評価

◆運営組織

1.幹事を数名置く−候補:神野原田岡松林坂本その他(東大生産技術研和歌山大......)

2.顧問も必要かも−他分野講師への紹介など.

3.幹事以外は各行事単位の自由参加とする.

4.費用は参加者負担とする.

◆個別テーマの例

1.土壌・地下水汚染の浄化技術と地下水理

2.流域水循環・物質循環と地中水

3.不均一な流れ(選択流フィンガリング根などの影響)

4.溶質移動と水移動のパラメータとその感度

5.トレーサを用いた地下水流動の解析

6.不飽和浸透速度(水の実流速)の実用的推定法

7.土壌空隙構造と通水性

8.地下水水質・水文測定法とデータ解析

9.地下水流動モデルと環境モデルの統合

*個別テーマについて

1.話しをしてみたいもの

2.話しをききたいもの

に分けて希望(キーワード)をお聞かせ下さい.